第1講
この教材の目的と前提
この教材では、見える人が無意識に行っている「画面を見る」「整っていると感じる」「違和感を覚える」という判断を、できるだけ言葉に置き換えます。
なぜ、視覚的レイアウトを学ぶ必要があるのか
Webサイト制作では、文章が正しく書かれているだけでは十分ではありません。訪問者は、文章を読む前に、画面全体の印象を受け取ります。整っている、信頼できそう、古く見える、読みづらそう、何を押せばよいか分からない、といった判断は、数秒で行われます。
全盲者が制作に関わる場合、スクリーンリーダーで内容を確認できても、見える人にとっての第一印象を直接確認することはできません。したがって、見た目の判断をすべて感覚に頼るのではなく、構造、言葉、確認項目に分解する必要があります。
講義ポイント「見えないからデザインは分からない」と考える必要はありません。ただし、「見えないまま、見える人と同じ確認ができる」と考えるのも危険です。必要なのは、見た目を判断するための翻訳表と確認手順です。
対象者の前提
この教材では、対象者が光や色を見た経験を持たない可能性を前提にします。そのため、色や形の説明では、視覚的な記憶に頼りません。
例えば、「青は落ち着いた色です」と言うだけでは不十分です。より正確には、「青は、銀行、行政、医療、ITサービスなどで、信頼、冷静、公共性、情報の印象を作るためによく使われる色です」と説明します。
この教材で重視すること
- コードの暗記より、画面の構造理解を優先します。
- 美しさを、感覚ではなく、余白、揃え、階層、統一感として説明します。
- アクセシビリティと視覚デザインを別物として扱いません。
- 目視確認者に依頼するための質問力を重視します。
- WordPressやCSSは、見た目を統制する手段として扱います。
この教材で扱わないこと
この教材は、CSS文法を一から詳しく学ぶ教材ではありません。CSSのプロパティ名は登場しますが、それは「見た目に何が起きるか」を理解するための補助です。
また、芸術的なデザインや高度なグラフィック表現を主目的にしません。まずは、公共性のあるWebサイト、会社サイト、案内ページ、申し込みページを破綻なく作るための基礎を扱います。
確認課題
課題身近なWebサイトを1つ選び、見える人に「最初に目に入るもの」「一番大きく見える文字」「押してほしそうなボタン」を聞いてください。返答を聞くことで、スクリーンリーダーの読み上げ順と、視覚的な注目順が違う場合があることを確認します。